青春の値段 さよならハルキ〜ペットサウンズの憂鬱〜

急に思い立ってオデの青春を売りにいってきました。
デビュー作を高校生のときに読んで圧倒的な衝撃を受けてからずっと、あらゆる作品をオンタイムで読み続けてきた村上春樹。
彼の本はまさにオデの青春そのものでした。
しかし、先の見えてきた人生にはもう、胸躍る物語も女の子をクスッとさせるような珠玉の言葉も必要ありません。
若い頃は「きっと死ぬまで繰り返し彼の本を読むんだろうなぁ」と思っていたけど、いまだに繰り返し読んだ本はほんの数冊どまり。
以前のような体力と視力を失った体にはもう、1冊の本を読了するエネルギーなんて残っていないのだとうすうす感づいていました。
増え続けるレコードの居場所と引き換えに思い切ってハルキ本を一気に処分することを思い立って・・・。
と、ほんとは昨日決行したのだけれど、どうしても小説と旅本と水丸さんとの共作本と数冊の翻訳本を処分することができませんでした。
でも今朝起きて「やっぱり全部処分しよう!」と思い立って残りを全部ブックオフへ連行。
スッキリしたものの、まるでオデの青春に値段をつけられたような・・・
まぁオデの青春なんてこんな値段だよなぁ、とふてくされながら隣のハードオフで中古レコードを物色。
そこにはハルキさんが大好きなビーチボーイズのアルバムが何枚も。しかもその中には、このあたりじゃなかなか出て来ないブツもあって・・・
オデの青春はそのままビーチボーイズのレコードに化けてしまいました。

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しかし、実はビーチボーイズの能天気なロックンロールは大好きなんだけど、「ペットサウンズ」はどうしても苦手で、なぜ世間ではあんなに評価が高いんだろう?と思っていました。
「ペットサウンズ=ブライアンウイルソン」の音楽性を絶賛するハルキさんのその部分だけはどうしてもオデには理解できないところでした。
これも何かの縁なので、まだ数ページしか読んでいなかったがために唯一手元に残したハルキ本を参考に、「ペットサウンズ」の秘密を解き明かしていくことが、村上春樹から課せられた宿題だと思って残りの人生日々精進してみます。

2015年の収穫と忘れ物 log No.165

7:00~9:00
排水口脇 腰〜腹 25℃ 南4m/s
ドライ+ヘッドキャップ+グローブ

最後までグデグデでしたが、大晦日に乗り納めできてよかった・・・。

いよいよ2015年も今日でおしまい。
いつも年末に「今年の収穫」をいろいろ思い出しつつ拾い上げていたのですが、今年はさっぱり。ジャンクレコードばかりが増えて行くばっかりでした。まぁそれはそれでいいのだけれど・・・

BOOKS

いつになく今年は読んだ本が少ない、しかも買ったまま途中で止まったままの本ばかり。その中で唯一読了できたのがカズオイシグロの「忘れられた巨人」。
前作に震えたので久しぶりの新作もかなり期待したのですが、今回はオデの超苦手な騎士道ブリブリなファンタジー形式を取り入れていたため、なかなかにしんどい読書体験でした(今年盛り上がっているスターウォーズが苦手なのも同じ理由です)。
前作や以前の作品のような、読み進むうちにいろんなものが徐々に歪んできてアッと驚くようなところへ連れて行ってくれる、あの「感情の同時進行体験」を得られなかったのが悔しい。
でも彼のインタビューを読むにつけ、来年は再読をしてみたいと思っています。

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MUSIC

今年も御大の新作が多数あったものの、できればレコードで聴きたい、でも高い、で躊躇しているうちに気がつけば年末に。あれもこれも欲しかったなぁ・・・。
そんな中でキースとボブディランの新作にはうっとり。特にキースの新作は良かった。今は亡きボビーキーズのサックスプレイが収録されていたのも驚きでした。
あとはブエナビスタの待望のアナログ盤発売。しかもキューバのうれしいニュースのおまけ付き、いやぁビックリでした。
もひとつはロンドンの小さなレコードショップが今年発売した、なんと浅川マキのベストアルバム。まさか彼女の新編集プレスを輸入盤で買えるなんて思いもよりませんでした。彼女の中古盤はえらい高くてなかなか手が出ないのですが、新品2枚組で良心的な値段なので大変ありがたいです。日本のレコード会社も見習ってください!

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MOVIE

今年はほとんど映画館に足を運ばなかった。
観たい映画が少なかったこともありますが、それよりもレコード探しに忙しくて・・・。
そんななか、唯一映画館で観た「バードマン」「ジェームズブラウン」は良かった。JBは当然だけど、バードマンのドラムだけのBGMが最高にカッコ良かったなぁ。
で、映画館だけでなく、ネットで観るhuluでも今年はあんまり観ていない、というかつまらなくて途中でやめてしまうものが多くて・・・それでも先日観たコーエン兄弟1998年の作品「ビッグ・リボウスキ」は今さらだったけど、最高にくだらなくておもしろかったなぁ、音楽も最高でamazon見たら最近レコード盤が出たらしく迷わずポチっとしてしまいました。今年最後にこんないい映画にめぐりあえてしあわせです。

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SURFING

今年は後半になってさっぱり乗れなくなってしまい最悪な状態ですが、SOULOVEカップでゲットしたニューボードがやっぱり今年最大の収穫です。
来年はこのボードで本当の収穫を得たいところですが・・・。

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そんなこんなで今年もありがとうございました。
よいお年を〜♪

秋の夜長のもだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵 その1

すっかり秋だし、サーフィンできないし、久しぶりに活字中毒症状が出てしまい、書店でオデを呼んだ本たちをかたっぱしから家へ連れ帰ってきました。
とりあえず読み終わったものから一部をご紹介。
オデの読むような本なんて参考にもならないでしょうけどね。

HOSONO百景 いつか夢に見た音の旅 細野晴臣

最近の日本の音楽と自分自身との関係は、すごく希薄に感じる。孤独だよ。

この人ほどいろんなジャンルの音楽で第1線を渡り歩いた人もいないでしょうね。でも本人はいたって自然体で飄々としている感じがいいなぁ、文章(というか本人は語っているだけなんだけど)もそんな感じがにじみ出ていていいです。
旅(がいちおうメイン)や映画や街やそしてもちろん音楽について、とても詳細な記憶力に驚かされますが、ボブ・ディランなんかもそうだけど天才はそういうものなんでしょうか。
はっぴえんどとYMO時代のエピソードがおもしろいです。

ヒップな生活革命 佐久間裕美子

知的レベルを疑うような発言をする大統領を選出し、自分の財力で払える以上の価格のマイホームを購入してサブプライム金融危機を引き起こし、世界経済を道連れにした馬鹿な人たち・・・

そんなアメリカ人が今どう変わってきているのか。
オデの最近のマイブームである「ポートランド」の謎がいろいろと描かれていて興味深かったです。
でもふと、この新潟のまわりを見てみれば若い人たちのいろんな営みが著者が言う今のアメリカの「ヒップスター」たちと重なって見えてきます。
なるほどなぁ、若い人たちがうらやましいぞぉ。

グレーな本 高城剛

今まで語られてこなかった「世界とのギャップ」に関して「わからない」「わかっていても話さない」日本の現在を、本書に多く記すことになりました。

著者はあの「沢尻エリカ」様の元旦那様です。
すいません、ずっとイケスカナイスカシタヒトだと思っていました。この本を読んで至極まっとうな物言いをされるとても賢明な方だと気がつきました。
出版社から「このままでは出せない」と言われる有料メールマガジン に即登録しましたので許してください。
偏見を捨ててぜひ一読を・・・。

 終わらない音楽 小沢征爾

山の底辺は俺がやるから、お前は頂点を目指せ。

山本直純さんからいつも言われていた言葉だそうです。
そんなことをひとから言われる人は幸せですね。
でもそれくらいに小澤さんには「花」があるんでしょうね。もちろん才能と運がなければこんな人生歩めないでしょうけれど。
とにかく周りの人たちが放っておけない、何かあると誰かが手を差し伸べてくれる、そういう幸運を引き寄せる力があるんでしょうね。
ご自分の人生をとっても駆け足で語っているので、テンポの速さについて行くのが大変ですが、休みを入れず一気に読んでしまうのがよろしいかと思います。
クラシックオンチなオデですが、この人だけは聴きたい(というより、見たい!)と思わせる唯一の方なんです。

透明な迷宮 平野啓一郎

日常を束の間、忘れさせてくれるような美しい物語

と著者自身が言うのもどうかと思いますが、
少なくとも、久しぶりに小説らしい小説(短編集ですが)を読んだ気がします。
震災以降、あまり小説を欲していなかったのでこれはちょっと前進かな?
実は平野啓一郎さんは初挑戦でした、この方の小説は難しそう、とずっと思っていたので・・・でもこれならOK。

離陸 絲山秋子

人間はやけくそになるけど、国とか時代がやけくそになったら終わりだと思う。いくつかの国はそうなるかもしれない。

デビュー作からずう〜っと、新作が発売されたら必ず読んでいる作家は村上春樹ともう一人、この絲山秋子だけ。
今までは中編や短編ばかりだった絲山さん、新作は400ページにわたる大長編でびっくりしました。
お得意のエログロを封印して、ハードボイルドで時空を超えた物語を丁寧に紡ぎ出していてとってもおもしろい!これは名作の誕生だと断言します。オデが断言してもどうにもならないけど。
本当なら村上春樹にもう一度こういうものを書いて欲しいんだけど、無理かなぁ・・・?

大坊珈琲店 大坊勝次

空気を共有することは、言葉のいらないある連帯と、自立を共有することと言えなくもありません。自然、会話は減ります。それでも意思の疎通は出来ていると思うのは、こちらの身勝手でしょうか。

ある珈琲店が38年の幕を閉じた。それだけのことだけどとっても心を打つものがあります。
店主のちょっとした思い出話と常連のお客さんたち(凄いメンツ!)の思いの詰まった言葉たち。
店主とお客の距離感がとってもいいんですね。
50ページにわたる写真がこれまた素敵。
オデにとっての大坊珈琲店は大堀幹線沿いにある「交響楽」という珈琲店です。お店で飲むことはめったにないけど、マスターが焙煎してくれた珈琲豆を家で毎日何度もドリップしています。

知ろうとすること 早野龍五 糸井重里

震災直後の混乱した中で発表された情報のままで知識が固定されているんですよ。だから、知識がずっとリニューアルされていない。

オデもたしかにそう思ったのでこの本を手に取りました。
「最低限これは知っておいたほうがいいんじゃないか?」と思うことがとてもニュートラルな状態で語られています。
それでも許せないものは断固許せないし、折り合いをつけて行かなきゃいかんものは現実としてそこにあるわけだし、「正しいことを知ること」がこんなにも面倒な時代になってしまって・・・若いひとたちにはぜひそれを教えてくれる「正しい人」を見つける選択眼を養って欲しいものです。

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