ディラン・ベック・キャパ、皇居 その3

さて、いよいよ今回のメーンイベント、ボブ・ディランのライブです。

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もうぶっちゃけ結論から言うと、素晴らしい!のひとこと。
考えられないかもしれませんが、とってもチャーミングでキュートでドリーミーなステージでした。

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バンドのこなれ具合が抜群で、その抑制の効いた円熟した演奏に支えられ、ディランのゲロゲロボイスが心地よく響き、終始うっとりするようなグルーヴが身を包み、夢見心地で体が左右に揺れ、自然と笑みがこぼれ、思わず隣の女の子と一緒に踊り出したくなるような、そんなピースフルなライブでした。

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何より音響が良くて、楽器の音がとってもキレイでバランスがいい。こんなのは達郎以来かも。
バンドはギター2人、ベース、ドラム、スチールギター(曲によってバンジョーとフィドル)という布陣。
ディランはいっさいギターを持つことは無く、半分以上の楽曲でピアノを弾きながら歌うのですが、そのピアノも単なるコード弾きではなく、リフを弾いたり、ソロを弾いたり、ちゃんと弾いてる!ハズシ具合も含めてそのタイム感が絶妙でとってもイケてました。

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ほとんどの楽曲はアレンジが大幅に変えられていることもあり、おおよそ判別のつかないものではあったけど、そんなの問題にならないほどのライブの醍醐味を堪能させてもらいました。

きっとディランなんて全く知らない女の子がポンとその場に放り込まれたとしても、彼女は十分にそのステージを楽しめたことでしょう。

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今のディランのライブは、昔のレコードで聞けるライブ盤の歌とは全くの別物。
フォークでもない、ロックでもない、ジャズでもない、強いて言えばカントリーぽいけどちと違う、なんというか革命前のキューバの華やかなダンスホールで演奏している楽団のイメージ、かなぁ・・・?
これはもう「ボブ・ディランというジャンル」の音楽としか言いようがありません。

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「勝手にしやがれ」のジュリーのような真っ白のスーツとハットで仁王立ちのまま

「ありがとう、休憩だ」

MCで発した言葉はこのたったひとこと(なんと2時間もないステージなのに、途中で20分ほどの休憩がある)。
アンコールでも黙ってやってきて、最後はメンバー全員黙ったまま客席を一瞥して去ってゆく・・・。
おおよそサービス精神のかけらもない、だけど演奏ですべてを語るこんなステージ、いままで見たことも無いカッコ良さでした。

しっかし、アンコール最後の「風に吹かれて」は、メロディもリズムも全く違ったアレンジでしばらく気がつきませんでした。歌詞をよく聴いてようやく分かった次第。前回までのセットリストで最後は「風に吹かれて」だと分かっていてもコレだから新鮮といえば新鮮、なんだけどほんとわけ分かんない人です。

この日のセットリストです。

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ディランの公式ホームページで全公演のセットリストが掲載されていて、各曲をクリックすると収録アルバム・歌詞を見ることができ、試聴までできます。
ライブでもこれくらい気の利いたサービスがあってもいいかとは思うけど、まぁそれはそれ。

心地よい気分でガンダムをあとにしたディラン初体験の夜でありました・・・♪

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P.S.
ディランのCDはけっこう持っていて、ピンポイント的にいろんなアルバムを聴いてはいたのですが、ディランの歴史というか音楽の変遷というか、全体の流れがいまいちオデの頭では整理しきれないままどうにも未だに不可思議で曖昧な存在でありました。
でも、昨年末に刊行された湯浅学さんの著書(なんと岩波新書!)をなにげなく読んだら、スッキリしゃっくり、ディランの変遷が自然に頭に入ってきてすべてが腑に落ちたようでした。

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これを読んで、オデのCDライブラリーには各時代で重要な位置を占めるアルバムがことごとく欠落していたことに気づき、あわてて中古レコードを買い漁りじっくりと聴いてきたひと月でありました。
それもほとんど無駄な作業に終わったけど、それでいいのだ!

ボブ・ディラン――ロックの精霊 (岩波新書)